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田中敦子について

田中敦子は昭和7年に大阪で生まれます。東大阪市の女子高・樟蔭高等学校に入学し、大学進学を控えた前年に大阪市立美術館の美術研究所に入所。同研究所で幾何学的な形態作品を得意とする、尼崎出身の具体作家・金山明と知り合います。のちの夫となる運命の出会いを果たした翌年、当時の京都市立美術大学に入学するも半年ほどで退学。そのまま、金山明、白髪一雄、村上三郎ら総勢15名と「芸術はなにも無い0の地点から出発して創造すべきだ」という意思のもと「0会」を結成します。翌年には体調を崩し入院するも、退院を待ちわびながら数字を順に描画したことがきっかけとなり、その経験を生かしたコラージュ作品「カレンダー」を制作。のちの代表作の完成エピソードとして語り継がれています。

それから2年の活動期間を経て、「0会」は芦屋の抽象画家であり実業家の吉原治良が主導する「具体美術協会」と合併。敦子は前衛芸術グループ・具体美術協会の主要メンバーとして活躍します。前衛美術とは「実験的かつ革新的な作品を追求し続ける」ことで、前衛＝アヴァンギャルドは芸術以外に文化や政治などの分野でも使われる言葉です。ただ、当時の具体美術協会に対する世界の評価は厳しく、アヴァンギャルドとは呼べないと批判する欧米諸国の各団体も多かったといわれています。

そうした協会批評を受けるなか、一員として敦子は独自の世界観を世に発信。特に象徴されるのが、活動初期に制作した「ベル」と「電気服」です。壁伝いに配置された床上の20のベルが順番に鳴り響く様は、会場を大いに魅了しました。一方の電気服は、天井から吊るされた多数の電球と管球の組み合わが不規則に点滅し、その光が服に見えるという仕掛けで演出。のちの傑作といわれる作品の完成にいたった時期でした。

その後も衣裳を中心とする具体作品を舞台で披露した敦子は、エナメル塗料による平面作品（油絵）も展開させていきます。その際、より平面作品への移行に拍車をかけたのが、具体美術協会の公演を見に来日していたフランスの美術批評家「ミシェル・タピエ」でした。それ以来、敦子は複数の配色を施した円と、それらをつなぐ夥しい線から構成された絵画を生涯にわたり制作していくことに。1980年代以降は国内で数々の功績を収め、1990年代には海外進出も果たしました。2000年代に入っても引き続き精力的な活動を見せていたものの、2005年に肺炎を患いこの世を去ることに。2007年と2012年には海外で展示会が開催され、いまだに多くのファンにその強烈なインパクトを与え続けています。