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于右任について

中国陝西省で1879年に生まれた于右任は、2歳で母を亡くして以来、幼少期は伯母である房太によって育てられます。10歳のとき、詩人の毛班香から古近体詩を学び、草書も覚えていくことに。主席で高校に入学すると、在学中もトップの座を維持。「西北の奇才」と呼ばれるほど、右任の学力は優れていたといわれています。1903年には、日本の国家公務員試験にあたる科挙に合格。晴れて挙人（日本の官僚にあたる立場）の身になったのも束の間、自作の漢詩「半哭半笑楼詩集」の発表が反体制と捉えられてしまいます。結果、挙人の資格をはく奪。その間は上海に隠れ住み、オーロラ大学に入学後、学友らと復旦大学を創設しています。

1906年、当時の清朝政府から追われる形で日本に留学した右任。在学中に在日中国人革命派による中国同盟会に加入すると、翌年に帰国しています。帰国後の1907年には、上海での神州日報の創設を皮切りに、民呼日報や民立報などを設立。革命派の言論や思想を発信していきます。ところが1912年の清朝崩壊による新生中国政府が誕生すると、右任の立場も一変していくことに。当時、臨時大統領に就任した袁世凱は、革命派により組織された一大政党・国民党の暗躍を懸念。新政府誕生間際まで、革命派とも蜜に連絡を取り合っていた袁世凱でしたが、新政権発足に伴い国民党の実質的な指導者である宋教仁を暗殺します。教仁と右任は、日本で加入した中国同盟会のメンバー同士。この件がきっかけとなり、右任は新政府で交通部次長に任命されたものの、袁世凱と対立していくことに。その後、約10年にわたり上海を拠点にしていた右任は、革命派の孫文を介して、再び北京を活動の場に変えます。1926年に蒋介石が国民政府を創設すると、再入閣を果たした右任。1931年に監察院院長に任命されて以来、死去するまで30年以上にわたり中国の要職をまっとうしました。

その間、草書の改編も幾度と試みた右任。楷書による漢字の画数の多さに限界を感じ、その問題を草書で解消していきます。試行錯誤の末に出版した「標準草書」の改訂は、10回に及んだほどの熱の入れよう。そうした変革期の中国を内外で支えた右任の功績は、日本でも数多く紹介されてきました。近年では、2014年に東京・池袋の東京芸術劇場で開催された「于右任没後50年記念『于右任回顧展』」が記憶に新しいところです。