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謝稚柳について

謝稚柳は1910年、江蘇省南部に位置する常州市に生まれます。9歳にして絵や古詩を学び、国学（中国の伝統芸術）の基礎を修得していった幼少期でした。19歳になると、明末清初期（1600年代）に活躍した文人「陳老蓮（陳洪綬あるいは陈洪绶の呼称もある)」の芸術的概念を模倣していきます。

26歳以後は重慶市を拠点とした稚柳。日中戦争の際は重慶で難を逃れたほか、32歳のときには張大千や沈尹黙など、書画界の有名人と交流を重ねます。同時に中国芸術史の研究もはじめていった稚柳は、33歳のときに張大千と敦煌へ出向き、数年間壁画の模写に取り組みました。そこで得た知見を「敦煌芸術叙録」や「敦煌石窟集」として出版しています。また、そうした活動と並行して、多くの都市で個展も開催。重慶や成都をはじめ、昆明、西安、上海などを巡った30代でした。

36歳のときには、中国古代書画のコレクターであり優れた鑑定力にも定評がある張伯駒と出会い、鑑定家としての転換期を迎えます。中華人民共和国が設立した40歳のときに文化遺物の保存に取り組み、中国芸術家協会上海支部の副会長などを歴任しました。

53歳のときには、国家文物局が編制した書画鑑定団のメンバーに抜擢。全国各地に所蔵された古代書の鑑定を包括的かつシステマチックに進めます。半年の活動期間で4つの省にまたがり、何千何万という書画を鑑定した稚柳。ここでの活動は、鑑定家・謝稚柳における重要な部分であり、歴代の書画鑑定家にはない稀なものだったといわれています。晩年は、中国では“伝説の山水画家”と呼び声が高い、李成や范寛の画風を模倣するも、1997年に他界。2010年にニューヨーク・メトロポリタン美術館で開かれた「謝稚柳生誕100年記念」では、娘である謝小珮から寄贈された150に及ぶ作品展示が話題を集めました。