王禔の買取価格は高額です

王禔について

1880年に浙江省杭州市で生まれた王禔。金石研究家として多くの著述を残した父・同伯から、篆刻と書についての手ほどきを受けます。金石とは、中国古代の金属器などに刻まれた銘文を研究する考古学の一種。そうした父の教えもあり、王禔は10歳にして体得した書法を印に刻んでいたといわれています。また学力にも長けており、就労期を迎えると、優れた算術とマッピング技術を買われ、鉄道会社に貢献していきます。1904年には、葉銘らとともに篆刻を主体とする団体「西?印社」を設立。その後、1913年に北京に招かれると、北京印鋳局の技師として活躍します。また、故宮博物院の前提委員会のメンバーとして、古物陳列所の鑑定員となり、羅振玉の印譜「金薤留珎」の編集に携わったのも、同時期のことです。1930年には、故郷である杭州市と隣接する上海に移住。以来、書や印を売って生計を立てながら、逝去するまで上海を活動の拠点としました。

王禔が篆刻を学んだ経緯は、西?印派とも呼ばれる一大派閥の浙派にはじまり、鄧石如を開祖とする鄧派、近代中国の主流である趙派といわれています。その作風は素朴で、正しい刻法を遵守したものでした。次代を担う後任たちには、刻法を遵守させ基礎を固めたあと、独自性を持たせて継承させています。書については、金石文・小篆における「当代一」と目され、後年は隷書・楷書にも高い評価を得ました。小篆とは、古代中国から伝わる象形文字を基本とする篆書体の1つです。日本では豪書体フォントで知られています。身近なものでは、パスポートの表紙の印字が、小篆に近い書体です。それに対して隷書体とは、篆書体を直線的に変えて、読みやすくした文字です。線が太く、太さも一律という特徴も持ちます。

晩年の王禔は、浙江省文史館の館員と上海国画院の画師を兼務。中国金石篆刻研究社では籌委会の主任委員にも任命されるなど、篆刻家および書家として国内屈指の地位を確立しました。