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啓功について

啓功は、清王朝の第5代皇帝・雍正帝の末裔として1912年に北京で生まれます。雍正帝は愛新覚羅一族でもあり、書画に造詣が深かった人物として有名です。また、雍正帝の祖父であり第3代皇帝・順治帝、父であり第4代皇帝・康熙帝、息子である第6代皇帝・乾隆帝は、清王朝として最も勢力を振るった時代。同時に漢民族の文化や芸術を吸収して、発展させていったことでも知られています。啓功もその血筋を引継ぎ、書道家として「楹聨」や「元人詩句」などの代表作を残しています。

啓功の時代に生きた愛新覚羅一族といえば、愛新覚羅溥儀が著名人です。映画「ラストエンペラー」のモデルになった人物で、晩年には「日清食品のチキンラーメンを好物とした」という逸話がある好日家として知られています。溥儀の実弟である溥傑が、日本の皇室の親戚と結婚したことも、当時の話題を呼びました。ほかにも、「東洋のマタ・ハリ」「男装の麗人」と呼ばれた清王朝第14王女・川島芳子、その妹で「清朝最後の王女」と呼ばれた顕琦も愛新覚羅の一族です。なお、川島芳子は中国のスター歌手・李香蘭と姉妹のような仲にあり、日中交流の架け橋として尽力した人物でもあります。

そうした清王朝の崩壊や第二次世界大戦という激動の歴史を経て、中国政権をリードしたのが毛沢東でした。毛沢東は1966年に文化大革命を宣言し、旧来の封建的な中国の文化や思想、宗教などを批判していきます。約10年にわたって続いた文化大革命の最中、毛沢東の命により大字報（壁新聞）が実施。その際、啓功は民衆の面前で壁新聞を書くことになり、「あのころは来る日も来る日も、朝から晩まで、人さまの書いたものを毛筆の大きな字で書き写すよう命ぜられていました。一生で、あのころほど毛筆を使ったときはありませんでしたね」というエピソードを残しています。また、1975年に夫人を亡くした際には、宗教が禁止されていた文革期において、人目を憚りお経を唱えたといわれています。