竹久夢二の買取価格は高額です

竹久夢二について

50年という生涯を通して、女性の絵を描き続けた竹久夢二。その哀愁にも勝る感情は絵画だけにとどまることなく、詩や小説にも、女性への慈しみ、また尊びとして表現させていきました。そんな夢二が、画家として本格的なスタートを切ったのは21歳のとき。当時はまだ学生の身であり、諷刺画や挿絵などをスケッチ程度にしたためていたものの、知人の紹介により新聞のコマ絵として連載されます。そして同年、コマ絵の投書作品である「筒井筒」が入選し、画家としてデビューを果たすことに。

それから4年後の25歳のときに、自身初の著書「夢二画集 春の巻」を発刊。たちまち世の脚光を浴びてベストセラーを記録し、夢二劇場が幕開けします。東京を拠点としながら、金沢・京都・長崎など全国を周遊し、女性を題材にした絵を数多く残していきます。その代表作といわれているのが、「黒船屋」「立田姫」「花火」の3作品です。特に、17歳の少女をモデルにした「黒船屋」は、日本画の代表的な技法である絹本彩色に定評がある名作。また、モデルの人物は諸説あり、日本橋の紙問屋の娘・彦乃ともいわれています。彦乃とは一時、京都に移り住んだこともあり、居を構えた清水寺の周辺には、現在も夢二の世界が生き続けるほどです。後年に手がけた「花火」では、大正ロマンに生きる女性の風情や情緒を、夏の風物詩に反映。時代とともに廃れつつあった、「木版画」の復活を象徴した作品として注目されました。晩年の傑作と呼び声が高い「立田姫」は、中国の歴史的詩人・杜甫の「歳晏行」を引用し、S字型の曲線美を描いた日本画です。

女性題材の日本画で世を魅了しつつ、並行させて挿絵画家としても活躍した夢二。そうした少年少女向けの雑誌は、生涯でおよそ30タイトルに及びます。なかでも、自身の故郷である岡山で過ごした、幼少期の一幕をノスタルジックに描いた「童子」は、挿絵画家・夢二の原点といえる作品です。

現在、夢二作品は清水寺前にある五龍閣で常設展示されているほか、京都では甘味党で知られた夢二にちなんだ観光コースが設けられるなど、今もなお多くのファンに親しまれています。2020年に竹久夢二美術館が発表した日本画「サーカス」の入手経路が、生前に面識のあった漫画家・田河水泡に贈ったものであり、それを遺族が同美術館に寄贈したことは記憶に新しいところです。